遺言書作成・相続手続きについて詳しい内容は「遺言書と相続手続きホームページ」に詳しく記載しています
公正証書遺言を作る方が増えています
日本公証人連合会の統計によりますと、公証役場で作成する「公正証書遺言」の件数が増えています
以下のデータをご覧ください
年 | 公正証書遺言作成件数 |
---|---|
平成19年 | 74,160件 |
平成20年 | 76,436件 |
平成21年 | 77,878件 |
平成22年 | 81,984件 |
平成23年 | 78,754件 |
平成24年 | 88,156件 |
平成25年 | 96,020件 |
平成26年 | 104,490件 |
平成27年 | 110,778件 |
平成28年 | 105,350件 |
この数値から考えられることは
いつどんな事故に遭うか分からない:震災が発生したことから、明日、一週間後、一か月後、一年後、いつ万が一のことが起きるか分からないという危機感により、自分の財産の処分をしっかりと考えた末、遺言書の作成をすることにした
「争族」の回避の関心:昔からよく言われていることですが、遺産を巡っての争いは、たとえそれが少額であっても「もらえるものはもらいたい」という心理から、親族間での争いとなるケースが多いです。
そのようなことを周囲から見聞きし、身近に感じる方々が多くなり、争いにならないように備えるケースが増えてきていると言えるでしょう
”資産なんてないから遺言は書かない”は争いの種となります
遺言書のお話をするとよくこの言葉をお聞きします
「家は賃貸だし、貯金も少ししかない」
「資産は家と土地だけ。貯金はない」
人によっていろんなケースがあるでしょう
遺言書を作らない場合、以下のような問題があり得ます
①夫Aがなくなり、夫Aの財産の相続人は妻Bと結婚・独立した一人の子供Cだけ。財産も夫Aと妻Bが二人で住んでいた家だけ
②相続人は妻Bと子供Cだけで、妻Bがそのまま家に住む。この時点で財産である家を誰が持つのかの話し合いはなく、以前の流れのまま妻Bが住み続けることとなった
③子供Cが病気で死亡。子供Cには配偶者であるDと、EとFという二人の子供がいた
④亡くなった子供Cが持っていた、家に対する持ち分を、配偶者Dとその子供であるE、Fの3人が権利を持つこととなる(数次相続が発生)
⑤妻Bは家の名義が夫Aのままだったので、今自分だけが住んでいることを理由に妻Bの単独登記にしたい
⑥配偶者Dと子供E、Fを交えて遺産分割協議をする
⑥の時点で配偶者Dと子供E、Fが妻Bに家を譲ると、すんなり言ってくれれば問題はありません
しかし、配偶者Dの心理としてはどうでしょうか?
夫である子供Cが病気で亡くなり、成人しているとはいえ子供E、Fと一緒に生きていかなくてはならない
年齢を重ねてきたので働くこともむずかしくなってきた。年金だけでは食べていけない。もらえるものはもらっておきたい・・・。
子供E、Fの状況もあるでしょう。
子育て世代でいくら働いても養育費がかさんでくる。もらえるものがあるなら少しでももらいたい・・・。
こういった背景があるとするなら、妻Bが家を単独登記することに同意してもらえるとは言いにくく、配偶者D、子供E、Fはそれぞれの持ち分について相続分を請求してくるかも知れません。
こうなると、妻Bは年老いた体で配偶者D、子供E、Fを何度も説得するか、泣く泣く家を売り、そこから配偶者D、子供E、Fの持ち分にあたる現金を支払うか、裁判所に調停・審判を求めるしかありません
これが「争続」です
上記の場合、遺言書によって、例えば
「子供Cに家を相続する、ただし子供Cは妻Bと同居し生活の面倒を見ること」(負担付き贈与)
と残しておけば、家を相続した子供Cはその家を売る権利があるので、家を売ったお金で妻Bの生活の面倒を見ることができたかも知れません
親族同士でいがみ合うことなく問題は発生しなかったでしょう
財産が少ないほど、こういった問題は多いのです
「うちはみんな仲が良いから揉めることはない」
お亡くなりになった方が親族間でのバランサー(均衡を取る人)だったから言いたいことを言わなかっただけかも知れません
遺言書を作成しておきましょう
ご自身が生前築いてこられた大切な財産は、お亡くなりになられたときにご親族が相続することとなります。
遺言書がなければ法定相続分に従って分割相続されますが、不動産などのようにきれいに分割できないものが遺産に含まれているとなると、遺産分割についての話し合い(遺産分割協議)において残された親族に争いが生じやすくなります。
”自分がいなくなった後もみんな仲良く暮らしてほしい”
誰もが思うこの想いを実現するためにも、遺言書を作成しておきましょう
遺言書を作るにあたって
生前築いてこられた大切な財産です
しっかりと考えて、じっくり取り組む必要があります
特にお決め頂きたいことは
「誰に」「何を」「どれだけ」
相続させるのか、という事です
例えば
「誰に」:長男に
「何を」:銀行口座の預金を
「どれだけ」:全て
という風に、具体的にお決め頂くことが必要です
例えば
「自分が入るお墓の世話をしてくれる子供には〇割の遺産を相続させる」
という内容ですと、遺産分割を相続人に任せる形になり、お亡くなりになった後、お子様たちの間でお墓の面倒を見るのは誰かを話し合うことになります
「誰もお墓の面倒を見たくない」となりますと、結局ここで争いが発生し、遺言書を作った意味がなくなってしまいます
相続する財産に差を付けたい相続人がいる場合にも、遺言書を作ることは有効です
例えば妻は既に亡くなっており、相続人が子供AとBの二人だけの場合
子供Aには遺産を多く相続して、子供Bには少なく相続させたいと思っていても、遺言書がないと、遺産は法定相続分に従って子供AとBに均等に分けられます
遺産の分け前を少なくしたい子供Bにも、子供Aと同じだけの遺産が渡ってしまうわけです
ここで、遺言書に「全財産を子供Aに相続させる」と書いておけば、とりあえず全財産は子供Aに渡ります
ただ、ここで子供Bには「最低限これだけはよこせ」という「遺留分」を主張することができます
しかしながら遺留分は、法定相続分よりも少ない上に、子供Bが子供Aに対して請求しないと主張できない権利です
遺留分にも配慮するのであれば、遺言書に、遺留分である「最低限の遺産」を子供Bに相続させることを書いておけば、そこで子供Bの遺留分を主張する権利はなくなります
ご自身の意思で、誰に何を相続させたいのかを明確にお決めください
ここが遺言書の要となります
遺言の種類
・自筆証書遺言
遺言を残す方(以下、遺言者)が自筆で作成する遺言です。
一人で書け、費用もあまりかからないというメリットはありますが、日付・氏名・文面の全てを自筆しなければならない、決められた作成方法に則していないと遺言自体が無効になる、紛失したり内容を書き換えられる、またそもそも亡くなられた後に、遺族が遺言書を発見できないなどのデメリットがあります。
・公正証書遺言
遺言者が公証役場の公証人に遺言の作成を依頼し、遺言書の原本を公証人に保管してもらいます。
公証人と話し合って作るので、作成方式の不備の心配がなく、原本を保管してもらえるので、紛失の心配や遺族が遺言書を発見できない心配などもありません。
作成にあたって公証人への費用が発生する、内容を第三者に知られてしまう、2名以上の証人を用意しなければならないなどのデメリットがあります。
・秘密証書遺言
遺言者が作成した遺言書を封筒に入れて封印し、公証人と2人以上の証人に署名してもらい、遺言者が遺言書を持ち帰ります。
文面は(署名以外)自筆でなくてもよい、内容を第三者に知られることがないというメリットはありますが、公証人への費用の発生、自筆証書遺言と同じく遺族が遺言書を発見できない、家庭裁判所の検認が必要などのデメリットがあります。
”遺言書を作ることを家族に知られたくない・・・”
遺言書を作ったことをご家族に知れることは避けたい・・・。
それぞれのご家庭のご事情で、そういうことももちろんあるでしょう。
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